オランダ代表の左利きセンターバック、ミッキー・ファン・デ・フェン(Micky van de Ven)。
驚異的なスプリント能力と広大な守備範囲、そしてクライフ哲学に基づく“前に出る守備”を武器に、トッテナムとオランダ代表の戦術の中核を担う存在となっている。
特にポステコグルー体制の超ハイラインを成立させるためには、彼の存在が不可欠だと The Athletic が強調するほど、チーム戦術への影響力が大きい。
本記事では、ファン・デ・フェンのポジション適性(左CB/左SB/3バック左ストッパー) と、プレースタイル(スプリント力・前向き守備・ビルドアップ・キャリー・戦術理解)を、海外分析を交えながら徹底的に解説する。
“ただ速いCB” ではなく、“速さを戦術化し、ハイラインを機能させるCB”。
その本質と唯一性を、どの記事よりも深く掘り下げていく。
この記事の内容
ミッキー・ファン・デ・フェンのプレースタイル
ここからが本題。
ファン・デ・フェンは“速いCB”ではない。
“速さを戦術化できるCB” である。
海外分析を統合し、5つの象徴的な特徴に分解する。
世界最速クラスのCBスプリント(ポジションの前提を変える能力)
The Athletic(2025/5/20)の表現は衝撃的だ。
「世界のどのCBよりも広いスペースを守れる」
ファン・デ・フェンの強みを“速い”と単純化してはダメ。
正しくは以下の3点:
A:加速が異常に速い(初速の鬼)
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1歩目・2歩目の速さがウイング並み
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背後に蹴られた瞬間、CBとは思えない距離の詰め方をする
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分析者曰く「最初の1秒が世界トップクラス」
B:トップスピードが長く維持できる
通常CBは10mで失速するが、ファン・デ・フェンは30〜40m伸びる。
BreakingTheLinesはこれを
「加速→維持のプロファイルが完全にウイング」と評している。
C:減速・切り返しが速い(実はこれが1番ヤバい)
スピードに乗った状態から、
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止まる
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方向転換する
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再加速する
これを滑らかにこなす“身体メカニクス”を持つ。
(The Athleticは「ヨンクによる徹底的な走法再構築」と記載)
→ つまり 「速いのにDFとしての重心がブレない」 という異常な選手。
海外の反応
「CBにウイングのスピードを与えたらこうなる、という例だ」(The Athletic)
「ハイラインを可能にする“走る戦術”」(英メディア)
「スプリントでゲームの構造を変えるCB」(BTRL)
クライフ由来の“前に出る守備”を最も体現するCB
ヨンク(元アヤックス/クライフ派)の指導により、ファン・デ・フェンは「守備とは距離の管理である」を土台に育てられた。
特に強いのが「前に出て潰す守備」。
● 相手FWの一歩目を止める
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コントロールミスに一発で食らいつく
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背負わせる前にボールに触る
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パスコースを限定して取り所を作る
「待つ守備」ではなく「奪いに行く守備」。
● ハイラインで絶対に引かない
トッテナムの守備は、ファン・デ・フェンがラインを引かない前提で設計されている。
ポステコグルーのコメント:
「彼がいるとラインが20m前に上がる」
● ハイプレスの安全弁
ハイプレスが剥がされても“ファン・デ・フェンが1人で40m救う” ため、チーム全体が前に出られる構造になる。
海外の反応
「トッテナムのクライフ的守備は、彼なしでは成立しない」(The Athletic)
「守備を“攻撃化”できるDF」(BTRL)
ボールキャリー能力(左サイドの突破役)
彼のキャリーは単なる持ち上がりではない。
「ライン間突破+相手のプレス構造破壊」 を組み合わせた高度なもの。
● 左サイドでの“縦キャリー”
ヨンク:
「ドリブルでライン間侵入するCBを作る」という育成方針のもと、細かい技術を叩き込まれた。
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角度をつけて相手を釣る
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内側に入ってDMの背中を取る
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そこから縦パスでフィニッシュ局面を作る
CBとしてはかなり珍しいタイプ。
● キープ力が強く奪われにくい
スプリント能力だけでなく、身体の使い方(肩の入れ方・重心移動)が異様にスムーズ。
→ 奪われずラインを上げられる=攻撃の起点になる。
海外の評価
「中盤の人数を自力で作れるCB」(BTRL)
「キャリーで一つラインを壊す希少種」(英解説)
パス精度と判断は“安全性”が武器(未完の才能でもある)
The Athleticによると、ファン・デ・フェンは 「安全で確実なパスを優先するタイプ」。
ただしこれは“消極性”ではない。
● 理由①:ハイライン前提で“リスク管理の正解”を選択している
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不必要な縦パスを避ける
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ボールロスト時の守備リスクを最重要視
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チーム戦術上の正解を選べる選手
→ この判断力は、実は非常に価値が高い。
● 理由②:潜在的にはロングフィードも高水準
ヨンクは毎週メッセージで「もっと縦パスを入れていい」と伝えている(The Athletic)。
これは “できない”のではなく、“戦術的に押さえているだけ” という意味。
海外の反応
「彼のパスは安全性が異常に高い。成熟した選択ができる若手DF」
「まだ攻撃面は伸びる余地がある。未完の怪物」
成長曲線が異常(フォレンダム→ヴォルフスブルク→トッテナム)
ファン・デ・フェンのキャリア成長は“常識外れ”。
● フォレンダム(育成年代):身体メカニクスの再構築
The Athleticによると、彼はここで 走り方・筋バランス・スタート動作をゼロから作り直された。
ヨンクは
「DFを再発明するように育成した」と語る。
トップスピードは維持したまま、筋量+10kg に成功。
これは超異例。
●ヴォルフスブルク → トッテナム:戦術的価値の爆発
ブンデスで守備対応を磨き、トッテナムで戦術的役割が爆発。
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ハイライン
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前進守備
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大外カバー
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キャリー
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スプリント復帰
これらすべてを“ほぼ1人で可能”にした。
海外の反応
「未来のCB像を最も現実的に示す選手」(BTRL)
「スピード・守備判断・姿勢、すべてが現代的」(英メディア)
ポジション:現代サッカーの“左CB像”を定義する選手
? ① 主戦場:左センターバック(LCB)
ファン・デ・フェンが世界的に評価される最大の理由は、「左利き/高速/ビルドアップ対応/ハイライン適性」 の4点をすべて満たすことだ。
左利きCBというだけで希少だが、“高速リカバリー”という唯一無二の個性を兼備することで、プレスビルドアップが前提の現代サッカーに不可欠な存在 になっている。
プレミアリーグでも、彼が出場するかどうかでトッテナムの戦術完成度が完全に変わる(The Athletic)というほど、アンジェ・ポステコグルーの戦術を成立させる中心ピース。
? ② 左サイドバック(逆三角形SB)としての適性
3バック状のビルドアップを形成したい試合では、ファン・デ・フェンが “左SB → 内側CB” のように機能することがある。
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低い位置で数的優位を作る
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プレッシャーを外すキャリー
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左足で前進コースを開く
特に、相手が前線3枚でプレッシングしてくる場合、トッテナムは彼をSB的に使ってプレス回避ラインを作る。
→ 「左利きで相手1stラインを割る」選手は世界でも数えるほど。
? ③ 3バック時は“左ストッパーとして世界レベル”
3バックシステムの場合、彼の守備範囲の広さはフルに活かされる。
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タッチライン際の1vs1対応は世界最高峰
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大外の長い距離を戻り切るスプリント
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ボール保持時はインナーラップで人数を増やす
BreakingTheLines はこの役割を
「ファン・デ・フェンは“フルスロットルのストッパー”」と表現している。
さいごに
ミッキー・ファン・デ・フェンは今、世界のセンターバック市場で最も評価を高めている左利きCBの一人だ。
世界最速級のスプリント、クライフ哲学由来の前向き守備、左足によるビルドアップ、そしてトッテナムのハイラインを機能させる圧倒的な守備範囲。
これら全てが組み合わさることで、彼は単なる有望株ではなく“現代的CBの完成形に最も近い存在” となっている。
The Athletic や BreakingTheLines が指摘するように、彼がピッチにいるかどうかでチームの戦術が成立するかすら変わるレベルの影響力を持つ。
これは、スピードだけでは決して到達できない領域だ。
CBとしての技術、戦術理解、キャリー能力まで兼ね備えたファン・デ・フェンは、今後数年で世界最高クラスの左CBに到達する可能性が極めて高い。
本記事で紹介した特徴こそが、彼が次世代CBの中心となる理由である。

