ニコ・パスのプレースタイルを語るとき、父パブロ・パスの存在を抜きにすることはできない。
1998年W杯に出場した元アルゼンチン代表DFである父は、「身体で戦う」サッカーを体現した人物。
一方で、ニコはスペイン育成の中で「頭で試合を動かす」現代型MFへと進化した。
本記事では、南米の血とスペインの戦術環境がどのように融合し、現在の“右ハーフスペースを支配する10番”が形成されたのかを、海外メディアの評価と実際の引用を交えながら深く読み解く。
この記事の内容
始まりは、カナリア諸島の静かな街だった
ニコ・パスは、スペイン領カナリア諸島テネリフェで生まれた。
この土地は、アルゼンチンから渡った父パブロ・パスにとって“第二の故郷”となった場所でもある。
父パブロは、1998年フランスW杯に出場した元アルゼンチン代表センターバック。
ニューウェルズ、テルナーナ、そしてテネリフェでプレーした後、現役晩年をスペインで過ごした。
つまり、ニコは 「アルゼンチンの血」 と 「スペインでの生活と育成」 の両方を受け取って育った。
これは偶然ではない。
この組み合わせこそが、現在の “右ハーフスペースを支配する10番” というプレースタイルの源流になっている。
父パブロ・パス|破壊と献身を体現したセンターバック
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| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | Pablo Ariel Paz |
| ポジション | センターバック |
| 代表歴 | アルゼンチン代表11試合 / 1得点 |
| 主なクラブ | ニューウェルズ / テネリフェ / バジャドリード |
| 主な大会 | 1998 W杯メンバー |
父パブロは「守備における勝負の覚悟」で知られていた。
相手FWとぶつかり合い、身体で制すタイプのDFだった。
引用:YouTube
しかし、息子は真逆だ。
それを最も端的に示すのは、父自身の言葉だ。
“Yo luchaba con el cuerpo. Él lucha con la cabeza.”
「私は身体で戦った。彼は頭で戦う。」
この言葉は、単なる世代差ではない。
“サッカーという競技が進化してきた方向の象徴” でもある。
ニコ・パスを形作った「二重のルーツ」
引用:infobae
| 影響源 | 文化性 | ニコにもたらしたもの |
|---|---|---|
| アルゼンチン(父の血) | 個の突破・間合いの騙し合い | 身体の軸の強さ・ボールの置き方の巧さ |
| スペイン(育成の地) | ポジショナルプレー・空間認知 | 右ハーフスペース支配・判断の速さ |
アルゼンチンは「個の勝負」を信じる文化。
スペインは「構造と判断」で優位を築く文化。
ニコは、この両方を同時に自然に獲得した選手である。
これは“意図された育成”ではなく、生活そのものが混ざり合った環境の産物。
この背景が、彼のプレーに “無理がなく、自然な完成度” を与えている。
海外メディアは何に注目しているのか
引用:fotmob
英語圏(戦術の進化としての文脈)
“Pablo Paz played through force; Nico Paz plays through structure.”
「パブロは力で戦った。ニコは構造の中で試合を動かす。」
→ 世代進化 × 戦術的成熟 の象徴として扱われている。
スペイン語圏(“血統 × 現代性” の評価)
“Tiene la sangre de Pablo, pero la cabeza del fútbol moderno.”
「彼はパブロの血を持ちつつ、現代サッカーの頭脳を備えている。」
→ プレースタイルは 血統のコピーではなく更新(アップデート)。
イタリア語圏(コモでの現在地の評価)
“Il figlio di Pablo non è una promessa. È già il direttore.”
「パブロの息子は有望株じゃない。すでに試合を指揮する存在だ。」
→ コモでは “若手扱い”ではない。
アルゼンチン系解説者(育成哲学としての視点)
“En Nico se ve algo raro hoy: aprende rápido sin perder el instinto.”
「ニコには今では珍しいものがある。本能を失わずに速く学習する選手だ。」
→ 「吸収速度 + 自分の型を保つ能力」が評価ポイント。
スペイン育成指導者(カナテラ視点)
“Es un mediapunta que entiende cuándo acelerar y cuándo pausar.”
「彼は加速すべき瞬間と止めるべき瞬間を理解しているトップ下だ。」
→ ここで注目されているのは、“テンポを支配できる若いMFは希少” という事実。
イタリア解説 / DAZN中継トーン
“Sembra lento, ma anticipa tutti.”
「ゆっくり見えるが、全員より先に動いている。」
→ 「遅そうに見える」= 判断と準備が速い → 時間を支配している証拠。
さいごに
ニコ・パスは、父パブロの影響を受けながらも、それを単に継ぐのではなく、現代サッカーに適応した形へと自ら翻訳している選手である。
アルゼンチンの「個の強さ」と、スペイン育成で培われた「構造と判断のサッカー」を自然に共存させることで、彼は“若手有望株”ではなく、試合のテンポと密度を操る「司令型アタッカー」として確立しつつある。
そのプレーには、血統と文化、そして時代の変化が折り重なった必然の進化がある。






