ニコ・パスは、アルゼンチンとスペインという二つのサッカー文化で育まれた、いま最も注目される「創造型MF」の一人だ。
その彼が、海外メディアやファンの間で 「メッシの後継」 と語られることが増えている。
ただし、それは “メッシのようにプレーする” という意味ではない。
比較されているのは、「チームの呼吸を整え、試合のテンポを決める役割」 という、アルゼンチン代表が長年大切にしてきた “10番の系統” だ。
本記事では、ニコ・パスがその文脈でなぜ評価されているのかを、現地メディアの分析・代表戦術の背景・ファンの声 から徹底的にひも解く。
この記事の内容
ニコ・パスとは?“南米の感性 × 欧州の構造”を併せ持つ創造型MF
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ニコ・パス(Nicolás Paz)は、アルゼンチン生まれでありながら、幼少期からスペインに渡り、レアル・マドリードの育成機関ラ・ファブリカで育った選手である。
この経歴は非常に重要で、彼のプレーの“二層構造”を生んでいる。
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南米的な「間」や“タメ”の使い方
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欧州式のポジショナル理解とリズム管理
つまり、「南米の柔らかさ × 欧州の精度」
このハイブリッド型は、代表・クラブのどちらにとっても磨く価値が高い。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年 | 2004年 |
| 身長 | 約185cm |
| 利き足 | 左 |
| 主戦場 | 中央〜ハーフスペース |
| キーワード | 試合を落ち着かせる選手 |
ニコ・パスは「爆発型」ではなく、“試合の呼吸をコントロールするタイプ” の10番だ。
「メッシの後継」と語られる理由は“模倣”ではなく“役割の継承”
引用:goal
ニコ・パスがメッシと比較されるのは、「ドリブル」でも「得点力」でもない。
評価されているのは、
“攻撃の中心点として、試合のテンポを決められるかどうか”
という役割の部分だ。
アルゼンチン代表は長年、
試合のテンポを司る役割をメッシに依存してきた。
メッシは10番でありながら、
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中盤に降りて組み立てる
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3列目と前線を繋ぐ
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フィニッシュと最終パスの両立
という “司令塔+フィニッシャー”の複合的役割 を担った。
この役割に「完全な代替」は存在しない。
だからこそ、次世代では 分業制 が必要になる。
その中で、
“中央で攻撃を整理できる選手”=ニコ・パス が注目されている。
現地メディアが示す評価
引用:ole
Diario Olé(アルゼンチン)
“Paz no juega para lucirse. Juega para ordenar.”
「パスは目立つためにプレーするのではない。チームを整理するためにプレーする。」
→ “派手さよりも整理能力” に価値を置く評価。
アルゼンチンでは「10番=華」ではなく「10番=試合を作る人」という伝統的な考えがあるため、
この言及は重要。
TyC Sports
“Tiene esa pausa que solo los enganches de verdad pueden manejar.”
「本物の司令塔だけが扱える“間”を持っている。」
→ 南米10番が最も重視される資質 = 呼吸・間合い
これは“育たないと身につかない”とされる。
La Nación(大手全国紙)
“La comparación con Messi no es técnica, sino estructural.”
「メッシとの比較は技術的なものではなく、役割における構造的なものだ。」
→ この記事が今回のテーマに最も直結
ラ・ナシオンは「プレースタイルではなく、チーム内で担う“位置づけ”が似ている」と整理している。
AS(スペイン)
“Paz entiende dónde poner la pelota para que el juego respire.”
「パスは、試合が呼吸できる位置にボールを置くことを理解している。」
→ 試合を落ち着かせる“置き所”のセンスを高く評価。
Relevo(スペイン新興メディア)
“No juega rápido. Juega correcto.”
「速さで勝負するのではなく、正しさで勝負する選手。」
→「スピード」ではなく判断の質で相手を崩すタイプと定義。
プレースタイル比較(より深い解像度)
引用:elgrafico
| 役割要素 | メッシ | ニコ・パス | 補足 |
|---|---|---|---|
| 低い位置からの組み立て | ◎ | ○ | 降りる位置の判断は同系統 |
| 左足の“体の向き”による優位形成 | ◎ | ○ | 受け方のコツが似る |
| 攻撃の間合い管理 | ◎ | ○ | 速度を上げないまま局面を動かす |
| 得点力 | ◎ | △ | ここは明確にタイプが異なる |
| 守備の巻き込み方(体の寄せ) | ○ | △ | 今後の成長領域 |
→ “試合の速度を決める選手”である点が近い。
コピーではなく 「系統的な継承」。
アルゼンチン代表が期待する理由
代表が必要とする後継は「代替」ではなく「構造の維持」
アルゼンチンの攻撃は、“中央の創造者”を軸にテンポを決める文化 が根強い。
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リケルメ
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アイマール
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メッシ
この“10番が試合を整える”構造が、国のサッカーの骨格そのもの。
ニコ・パスは、その“流れを断たずに繋ぐ”側の選手として期待されている。
現在のメンバー構造との比較
| 選手 | 主な役割 | 備考 |
|---|---|---|
| メッシ | 創造 + 得点 | 時間管理の中心 |
| エンソ・フェルナンデス | 低い位置の組み立て | 司令塔型ではない |
| マカリステル | 中盤の整理と接続 | 推進や加速は担当しない |
| ガルナチョ | 推進・突破 | “点を作る”人 |
| ニコ・パス | 前線と中盤の接続 / 呼吸調整 | 役割的に“10番ラインの継承候補” |
→ ニコは“誰も代替できない領域”に座っている。
最も期待されているのは「試合の温度を下げられる選手」になること
アルゼンチンのサッカーは感情の波が大きい。
だからこそ、「温度を下げられる選手」は極めて重要。
テンションが上がりすぎた時間帯で、あえて試合を落ち着かせられること。
これはメッシが最も得意としていた領域であり、ニコが既に片鱗を見せている。
現地ファンの評価(SNS引用・さらに増量)
アルゼンチンTwitter(X)
「ニコは走ることでゲームを変えるのではない。考えることで変える。」
→ 脳でプレーする選手 と認識されている。
「ガルナチョは爆発。パスは静寂。アルゼンチンは両方を必要とする。」
→ 対照的な価値同士が共存できる という視点。
スペイン(マドリディスタ)
「時間を与えれば育つタイプ。放り投げるには惜しい。」
→ “ゆっくり育てるべき選手”として理解されている。
アルゼンチン国内若手育成アカウント
「彼には、試合の重さを“感じない神経”がある。」
→ プレッシャーに飲まれない性質を評価。
さいごに
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ニコ・パスが語られる「メッシの後継」とは、才能のコピーではなく“役割の継承” を意味する
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アルゼンチン代表は、メッシが担ってきた 試合の呼吸と創造の中心 を次世代へ橋渡しする必要がある
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その中で、ライン間の受け・間合いの管理・試合の温度を下げられる能力 を持つニコは、特別な立ち位置にある
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まだ完成形ではなく、“育てながら未来を任せる” タイプの選手である
つまり、
ニコ・パスが背負う可能性は、“メッシの再現”ではなく、“アルゼンチンの攻撃哲学を繋ぐこと”
である。
彼がどれだけ試合を支配できる選手に成長するか――。
その過程こそが、今後の代表とクラブの物語の中心になる。







