レアル・マドリードとブラジル代表のスター、ヴィニシウス・ジュニオール。
彼の名前は華やかなプレーやゴールだけでなく、スペインで繰り返される人種差別とその闘いでも広く知られるようになりました。
スタジアムでの侮辱、ゴール後のダンスをめぐる批判、そしてそれに対する毅然とした発言――。
ヴィニシウスはサッカー選手としてだけでなく、差別に立ち向かう象徴的な存在となっています。
本記事では、彼の発言と具体的な事件、そして海外の反応を詳しく紹介します。
この記事の内容
ヴィニシウス・ジュニオールと人種差別・発言:批判と支持の間で
引用:FIFPRO
継続する人種差別との闘い
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「スペインに来て以来、たくさん苦しんできたし、今も苦しんでいる(I suffered a lot and still suffer)」とヴィニシウス自身が語る。
彼は2018年以来、スタジアム内外で人種差別的な侮辱に晒されてきた。
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2023年5月、バレンシアのメスタージャでの試合中、観客から「猿(macaco)」呼ばわりされたことで試合が一時停止。
後に三人のファンが差別主義的動機のもと罰せられた。スペイン国内で初となる“差別を理由とする刑事有罪判決”の1つとして注目された。
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また、ヴィニシウスは「もし再び酷い差別を受けるようなら、試合をピッチから降りる準備がある」と発言。
チーム全体での一致団結を呼びかけており、“立場をとる”ことの重要性を強調している。
ゴール祝福/ダンス・抗議行動としての発言
O futebol é alegria. É uma dança. É uma verdadeira festa. Apesar de que o racismo ainda exista, não permitiremos que isso nos impeça de continuar sorrindo. E nós continuaremos combatendo o racismo desta forma: lutando pelo nosso direito de sermos felizes. #BailaViniJr pic.twitter.com/yCJxJEAn4a
— Pelé (@Pele) September 16, 2022
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ヴィニシウスのゴール後のダンスや祝福スタイルは、楽しさや文化の表現としてのみならず、差別に対する“応答”としての意味も持っている。
特に批判が出た時に、それを否定するだけではなく、「喜びを表す権利」を主張する手段になっている。
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たとえば、Atlético vs Real Madrid の試合で踊った祝福に対し、ある代理人が「Viníciusは猿のように振舞っている」と発言して批判を呼んだ。
ヴィニシウスはこれに対して、文化表現としてのダンスを止めるつもりはないと反論。
制度的対応と判決の意義
引用:edition.cnn
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2024年6月、バレンシア戦での差別行為を含む事件で三名の観客が「道徳的損害に対する犯罪(crime against moral integrity)」および差別的動機を伴う侮辱で有罪判決を受けた。
禁酒・スタジアム入場禁止・刑の執行猶予付きなどの処分。
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FIFPROはこれを「差別との闘いにおける歴史的なマイルストーン」と評しており、被害を受ける選手たちにとって“希望の証”になったと報じられている。
海外メディアとファンの反応
引用:espn
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メディアでは、「ヴィニシウスは声を上げることで差別を“見える化”している」と評価。
スペインやブラジルの主要メディアで、彼の経験が人種差別問題の議論を喚起するきっかけとして取り上げられている。
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多くのファンが SNS やスタジアムでの賛辞を送っており、特にブラジル国内では「ダンスを止めないで」「踊ることこそ文化」「差別に屈しない姿勢」が支持されている。
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また、国際的なスポーツ団体やアスリート仲間もヴィニシウスを支援しており、ネイマールをはじめとした同国選手や他国選手からのエールの記事が多い。
Real Madrid やブラジルのサッカー連盟も、公の声明で差別的発言を非難し、ヴィニシウスへの支援を表明。
ヴィニシウス自身の心情と発言
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差別の被害を受けるたび「孤立感」「疲労感」を感じると語っており、「それでもやめない」「プレーを通じて変化を促したい」という意志を隠さない。
バルセロナ戦前など、「自分を見せ続けること」が”応答”であり、“証明”だという考えを述べている。
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また、差別事件の法的措置や処罰が遅い/甘いとの不満を公に表明しており、「条例や法律がもっと強くならなければ変わらない」という主張。
最近の事件と社会的影響
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2025年6月、マドリードの裁判所でヴィニシウスを侮辱する“人形(effigy)”を使った憎悪犯罪として四人に“執行猶予付き刑および若干の罰金と行動制限”が科せられた。
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Netflix のドキュメンタリー作品『Vini Jr』がリリースされ、差別問題への彼自身の体験、およびスペインで起きてきた複数の事件を取り上げている。
これが大きな注目を集め、ファンだけでなく一般視聴者にも彼の立場や苦悩を伝える手段となっている。
さいごに
ヴィニシウス・ジュニオールは、差別を受けても沈黙することなく声をあげ続けてきました。
バレンシア戦での侮辱事件や法的判決、ダンスをめぐる議論、そしてSNSや会見での強い発言は、サッカー界だけでなく社会全体に影響を与えています。
彼の姿勢は多くのファンや同僚選手、メディアから支持される一方で、批判や敵意も伴います。
しかし、それでも毅然と立ち向かうことで差別問題を“見える化”し、制度的な変化を促す存在となりました。
今後もヴィニシウスがサッカーと社会の両面でどのようにリーダーシップを発揮していくか、注目が集まっています。